「安倍首相、辞任の意向固める」
衝撃のニュースが一斉に報じられたのは8月28日、午後2時過ぎのことだ。同日夕方の会見で、安倍首相は正式に辞任を表明した。辞任の理由については、「6月の定期健診で、(持病の潰瘍性大腸炎の)再発の兆候がみられると指摘を受け」たとし、「体力が万全でないなか、政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません」と説明した。
長期政権の突如の幕切れ。約7年8カ月続いた政権下では、特定秘密保護法や安全保障関連法の強行採決で、国民の意見を二分することもあった。「森友学園」や「加計学園」の問題も、いまだ疑惑は残ったまま。最近では、前東京高検検事長の黒川弘務氏の定年延長を閣議決定したことや、河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反などに対しても、「政府の説明責任が果たされていない」という声は根強く残っている。
そんななかで、安倍政権を猛烈に批判し続けてきた人たちがいる。憲法・法政策論専門の早稲田大学・水島朝穂教授もその一人だ。水島教授は、週に1回、欠かさず更新してきた自身のブログで、政治に対して言及してきた。ブログには、「『アベノマスク』という愚策」「独裁国家と見紛うばかりの異様さ」といった痛烈な言葉が並ぶ。
そんな水島教授は、今回の安倍首相の退陣をどうみたのか。そして、「ポスト安倍政権」についてどのような思いを抱いているのか。話を聞いた。
* * *
――安倍首相が病気を理由に、辞意を表明しました。
第一次安倍政権のときも、持病の難病が原因で辞任したことになっています。ただ意外と忘れられがちですが、辞任の記者会見で、安倍首相は病気や体調のことには一言も触れませんでした。7月の参院選大敗の責任をとらないまま内閣改造までやって、テロ特措法による給油活動をめぐり、当時の野党第一党だった民主党の小沢一郎氏との党首会談がうまくいかず、「自分では話をまとめることができない。政治を停滞させるわけにはいかないから辞める」という説明だったわけです。
当然、「そんなことは辞任の理由にはならない」とマスコミや国民の厳しい批判にさらされました。それが後になって、病気だったことが判明したわけです。
今回の安倍首相の辞任理由は同じく持病の悪化ですが、第一次政権のときの辞任とは性質が全く異なる。今回の辞任には、はじめから「病気だからしかたない」という意識を国民に植え付けて、これまでの批判をかわす意図が透けてみえます。
8月24日、安倍首相は慶応病院に長時間滞在しました。それまで最長だった佐藤栄作氏の連続首相在職日数を上回った途端にです。誰がみても、「病気なのでは」と疑うのは明らか。政治家は健康が命。重い病気だということが判明すれば、政局を揺るがすことになるため、政治家は密かに通院したり、病気を隠したりするのが普通です。歴代の首相をみても、同じことが言えます。
しかし安倍首相はあえて病気が疑われる雰囲気づくりをして、その後、病を発表した。そんな安倍首相を叩く人がいれば、「病人に鞭を打つな!」とかばう人は必ず出てきます。実際、ネットなどではそのような発言もみられます。安倍官邸の作戦通りでしょう。
――病気を理由に、これまでの政策への批判をかわせると?
日本人は「病気」と「死」に弱い。「公」と「私」の区別がつけられないのです。どんなに悪人でも、「死者の悪口は言わない」というような、日本人独特の美徳がある。もちろん私も、安倍首相を1人の人間としてみたとき、病気のことは気の毒に思います。
しかしコロナ対策は「アベノマスク」に象徴されるようにうまくいかず、国民の不満と不安は支持率の低下につながりました。これからより大きな難題が内外ともにやってきます。それをこなす自信がなくなったので政権を投げ出したわけで、ことさらに「病気」を理由に辞職するのは「政治的仮病」だと私ははっきり言いたい。「病気の人を批判するな」というのは、「公」のトップである内閣総理大臣には成り立たないのです。
(略)
AERA.dot
2020.9.7 08:00
https://dot.asahi.com/dot/2020090600010.html
衝撃のニュースが一斉に報じられたのは8月28日、午後2時過ぎのことだ。同日夕方の会見で、安倍首相は正式に辞任を表明した。辞任の理由については、「6月の定期健診で、(持病の潰瘍性大腸炎の)再発の兆候がみられると指摘を受け」たとし、「体力が万全でないなか、政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません」と説明した。
長期政権の突如の幕切れ。約7年8カ月続いた政権下では、特定秘密保護法や安全保障関連法の強行採決で、国民の意見を二分することもあった。「森友学園」や「加計学園」の問題も、いまだ疑惑は残ったまま。最近では、前東京高検検事長の黒川弘務氏の定年延長を閣議決定したことや、河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反などに対しても、「政府の説明責任が果たされていない」という声は根強く残っている。
そんななかで、安倍政権を猛烈に批判し続けてきた人たちがいる。憲法・法政策論専門の早稲田大学・水島朝穂教授もその一人だ。水島教授は、週に1回、欠かさず更新してきた自身のブログで、政治に対して言及してきた。ブログには、「『アベノマスク』という愚策」「独裁国家と見紛うばかりの異様さ」といった痛烈な言葉が並ぶ。
そんな水島教授は、今回の安倍首相の退陣をどうみたのか。そして、「ポスト安倍政権」についてどのような思いを抱いているのか。話を聞いた。
* * *
――安倍首相が病気を理由に、辞意を表明しました。
第一次安倍政権のときも、持病の難病が原因で辞任したことになっています。ただ意外と忘れられがちですが、辞任の記者会見で、安倍首相は病気や体調のことには一言も触れませんでした。7月の参院選大敗の責任をとらないまま内閣改造までやって、テロ特措法による給油活動をめぐり、当時の野党第一党だった民主党の小沢一郎氏との党首会談がうまくいかず、「自分では話をまとめることができない。政治を停滞させるわけにはいかないから辞める」という説明だったわけです。
当然、「そんなことは辞任の理由にはならない」とマスコミや国民の厳しい批判にさらされました。それが後になって、病気だったことが判明したわけです。
今回の安倍首相の辞任理由は同じく持病の悪化ですが、第一次政権のときの辞任とは性質が全く異なる。今回の辞任には、はじめから「病気だからしかたない」という意識を国民に植え付けて、これまでの批判をかわす意図が透けてみえます。
8月24日、安倍首相は慶応病院に長時間滞在しました。それまで最長だった佐藤栄作氏の連続首相在職日数を上回った途端にです。誰がみても、「病気なのでは」と疑うのは明らか。政治家は健康が命。重い病気だということが判明すれば、政局を揺るがすことになるため、政治家は密かに通院したり、病気を隠したりするのが普通です。歴代の首相をみても、同じことが言えます。
しかし安倍首相はあえて病気が疑われる雰囲気づくりをして、その後、病を発表した。そんな安倍首相を叩く人がいれば、「病人に鞭を打つな!」とかばう人は必ず出てきます。実際、ネットなどではそのような発言もみられます。安倍官邸の作戦通りでしょう。
――病気を理由に、これまでの政策への批判をかわせると?
日本人は「病気」と「死」に弱い。「公」と「私」の区別がつけられないのです。どんなに悪人でも、「死者の悪口は言わない」というような、日本人独特の美徳がある。もちろん私も、安倍首相を1人の人間としてみたとき、病気のことは気の毒に思います。
しかしコロナ対策は「アベノマスク」に象徴されるようにうまくいかず、国民の不満と不安は支持率の低下につながりました。これからより大きな難題が内外ともにやってきます。それをこなす自信がなくなったので政権を投げ出したわけで、ことさらに「病気」を理由に辞職するのは「政治的仮病」だと私ははっきり言いたい。「病気の人を批判するな」というのは、「公」のトップである内閣総理大臣には成り立たないのです。
(略)
AERA.dot
2020.9.7 08:00
https://dot.asahi.com/dot/2020090600010.html
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