韓国憲法裁判所で、非常戒厳を宣言した尹錫悦（ユンソンニョル）大統領の弾劾審判が進むに従い、関係者による主張や証言の食い違いが際立っている。大統領が起訴された内乱罪を巡る裁判も近く本格化する。

　民主主義を脅かす事態を再び招かないために、戒厳令関係者には真実を語る責任がある。

　憲法裁の審判では、国会に投入された兵士を指揮した前陸軍特殊戦司令官が、本会議場から議員を排除するよう尹氏から電話で指示されたと証言。

　これに対し、尹氏や金龍顕（キムヨンヒョン）前国防相は指示を否定し、前首都防衛司令官も、国会による戒厳令の解除決議を妨害する指示は受けていないと述べた。

　検察は内乱罪の起訴状で、尹氏が李祥敏（イサンミン）前行政安全相に一部の革新系新聞社やテレビ局への電気、水の遮断を命じる文書を示したと指摘したが、李氏は否定した。

　憲法裁の審判と内乱罪の裁判は別の手続きだが、最高権力者がなぜ兵力を国会に送ったのか、政府内でどんなやりとりがあったのかを究明する目的は共通する。

　当事者が韓国民や国際社会に対して、事実を明らかにするよう期待する。それが憲法や法の秩序を維持し、民主主義を守ることにつながるからだ。

　司法手続きと並行して次期大統領選に向けた動きも加速。中間層の支持拡大を意識した舌戦も激しくなっている。

　革新系最大野党「共に民主党」の李在明（イジェミョン）代表は国会演説で、経済成長や、党派対立を超えた協力の重要性を強調。

　一方、与党「国民の力」の権性東（クォンソンドン）院内代表は内需拡大のための補正予算編成の必要性に言及し、政府高官の弾劾訴追案を連発した野党を激しく批判している。

　ただ、与野党の激しい対立が続くことで、半導体業界の経営基盤強化や、少子高齢化対策を進めるための新組織創設など、経済や暮らしに直結する法案の成立が遅れることへの懸念も出始めている。

　真相究明は当然だが、韓国国会は暮らしを最優先に法案審議を進めることも忘れてはならない。

東京新聞 2025年2月14日 07時10分
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