シナイ半島でのモスク襲撃テロから3日後の11月27日に首都カイロで行われた追悼集会
エジプトのシナイ半島で11月24日に起きたモスク(イスラム教礼拝所)襲撃事件は、300人以上という死者の多さだけでなく、この国でモスクを標的とした初めてのテロという重大性を持つ。
犯行声明は出ていないが、武装集団はイスラムの黒い旗を持っていたという現場の情報がある。黒い布に「アッラーのほかに神はない」というコーランの文字を白で抜いたもの。「イスラム国」(IS)の旗と報じられているが、IS出現以前からアルカイダ系組織でも使われており、イスラムの厳格な実施を追及する「サラフィー主義者」の一部にいる、厳格なイスラムの実現のために「ジハード(聖戦)」に訴える「サラフィー・ジハーディ(戦闘的サラフィー主義者)」が掲げている旗である。
モスク襲撃の翌日、エジプトの独立系新聞「シュルーク」は1面で「エジプト史上、最悪のテロ、"イラク方式"による虐殺」と見出しを付けた。イスラム過激派によるモスクへのテロは、イラクやサウジアラビアなどでISによるシーア派モスクへのテロがある。ISはシーア派を「イスラムからの逸脱」と断罪し、「ジハード」の対象とする。
しかし、エジプトはスンニ派だけの国で、今回標的となったのは「スーフィー」と呼ばれる神秘主義者が集まるモスクとされるが、それもスンニ派である。これまでエジプトではキリスト教コプト派の教会がテロの標的になることはあったが、モスクへのテロはなかった。
モスクはイスラムの義務である礼拝を行う場所であり、「神の家」とも呼ばれる神聖な場所である。武装集団はスーフィー主義を「反イスラム」と断罪する過激な宗教見解を実行したことになり、今後、同様のテロが続く可能性を示している。
スーフィーは清貧な生活をして修行し、「神との合一」を目指す。回転して踊ったり、同じ祈りの言葉を繰り返したりする修行で知られる。スーフィー主義はエジプトでは人々の間に広まり、各地に「ターリカ」と呼ばれる教団がある。人口の15%から20%がスーフィー主義を信奉しているという推計もある。
今回、武装集団に襲撃されたシナイ半島北部の町ビル・アルアブドの「ラウダ・モスク」は、スーフィー主義者が集まる場所として有名だった。2016年11月には同地のIS系組織「ISシナイ州」が、このモスクを拠点に活動していた97歳の宗教指導者を誘拐して、「背教者」として斬首処刑する映像を公開した。
エジプトのシナイ半島で11月24日に起きたモスク(イスラム教礼拝所)襲撃事件は、300人以上という死者の多さだけでなく、この国でモスクを標的とした初めてのテロという重大性を持つ。
犯行声明は出ていないが、武装集団はイスラムの黒い旗を持っていたという現場の情報がある。黒い布に「アッラーのほかに神はない」というコーランの文字を白で抜いたもの。「イスラム国」(IS)の旗と報じられているが、IS出現以前からアルカイダ系組織でも使われており、イスラムの厳格な実施を追及する「サラフィー主義者」の一部にいる、厳格なイスラムの実現のために「ジハード(聖戦)」に訴える「サラフィー・ジハーディ(戦闘的サラフィー主義者)」が掲げている旗である。
モスク襲撃の翌日、エジプトの独立系新聞「シュルーク」は1面で「エジプト史上、最悪のテロ、"イラク方式"による虐殺」と見出しを付けた。イスラム過激派によるモスクへのテロは、イラクやサウジアラビアなどでISによるシーア派モスクへのテロがある。ISはシーア派を「イスラムからの逸脱」と断罪し、「ジハード」の対象とする。
しかし、エジプトはスンニ派だけの国で、今回標的となったのは「スーフィー」と呼ばれる神秘主義者が集まるモスクとされるが、それもスンニ派である。これまでエジプトではキリスト教コプト派の教会がテロの標的になることはあったが、モスクへのテロはなかった。
モスクはイスラムの義務である礼拝を行う場所であり、「神の家」とも呼ばれる神聖な場所である。武装集団はスーフィー主義を「反イスラム」と断罪する過激な宗教見解を実行したことになり、今後、同様のテロが続く可能性を示している。
スーフィーは清貧な生活をして修行し、「神との合一」を目指す。回転して踊ったり、同じ祈りの言葉を繰り返したりする修行で知られる。スーフィー主義はエジプトでは人々の間に広まり、各地に「ターリカ」と呼ばれる教団がある。人口の15%から20%がスーフィー主義を信奉しているという推計もある。
今回、武装集団に襲撃されたシナイ半島北部の町ビル・アルアブドの「ラウダ・モスク」は、スーフィー主義者が集まる場所として有名だった。2016年11月には同地のIS系組織「ISシナイ州」が、このモスクを拠点に活動していた97歳の宗教指導者を誘拐して、「背教者」として斬首処刑する映像を公開した。
処刑の後、IS系の英語インターネットマガジン「ルミヤ」の2016年12月号に、ISシナイ州の「イスラム法執行部門」の長のインタビューが出ている。それにはシナイ半島がスーフィー教団の拠点になっているとして名前が挙がっている。スーフィー主義を「イスラムからの逸脱」であると断罪し、さらにラウダ・モスクに集まるスーフィー教団について「エジプトの無法な政府機関と強い関係を持っている」と非難。「ISが征服したら、根絶する」と語っている。
強硬的手法による「テロとの戦い」の限界
今回のモスク襲撃がISによるものかどうかとは別として、テロの背景に同じスンニ派の信者でありながら、イスラムをめぐる深い亀裂があることが見えてくる。
シナイ半島は砂漠と山岳部で覆われ、サウジアラビアや西のリビアともつながる部族的な慣習が強い土地柄で、ISだけでなく、いくつもの過激派組織がある。これまでもシナイ半島のエジプト軍や治安部隊、外国人観光客が宿泊するホテルを標的としたテロが続き、2015年10月にはロシアの民間機が墜落し、ISシナイ州が犯行声明を出した事件があった。
現在の軍主導のシーシ政権は2011年の「アラブの春」後の選挙で選ばれたイスラム穏健派組織「ムスリム同胞団」系の大統領を2013年にクーデターで排除し成立した。シーシ大統領は権力掌握後、シナイ半島ではISなど過激派との「テロとの戦い」を激化させたが、過激派の活動は収まらず、最悪のテロが起きた。
今回、テロの標的が軍からスーフィー主義者へと広がったことで、従来の強硬的手法による「テロとの戦い」の限界が露呈した。エジプト軍はテロの後、シナイ半島の山岳地域の「テロリスト拠点」を空爆して、車両を破壊したと発表した。しかし、空爆の標的をどのようにして確定したかも明らかでなく、新たな暴力の連鎖を生むことになりかねない。
サラフィー主義は90年代以降、インターネットや衛星放送の普及するなかで若者を中心に広がった。旧ムバラク政権時代(1981~2011年)は非政治的だったが、「アラブ春」の後、政治に参加し、選挙でムスリム同胞団に次ぐ勢力となった。「イスラム的な公正」の厳格な実施を求める考え方が若者たちに受け入れられていると見られる。
現在、サラフィーとスーフィーという全く相反する2つの宗教運動が、エジプトの民衆の間に広がっていることになる。共に民衆レベルでは平和主義だが、スーフィー主義者は軍や警察とのつながりが深く、シーシ政権の強権体制を支えている。一方のサラフィー主義の中から、「ジハード」に傾斜して、政権と対立する流れが出てくる。ムスリム同胞団は両方の要素を持ち、双方の間にあったが、現在は政治から排除されている。
この事件がすぐにシナイ半島を超えて、エジプト本土で「サラフィー対スーフィー」の抗争に発展するとは思わない。しかし、今回のイスラム過激派によるスーフィー系モスクへのテロは、エジプトでイスラム教徒同士が敵対する前例をつくり、今後、状況が悪化すればイラクのように際限のない暴力の連鎖が起こる可能性を示したことになる。
Newsweekjapan
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2017/11/post-34.php
強硬的手法による「テロとの戦い」の限界
今回のモスク襲撃がISによるものかどうかとは別として、テロの背景に同じスンニ派の信者でありながら、イスラムをめぐる深い亀裂があることが見えてくる。
シナイ半島は砂漠と山岳部で覆われ、サウジアラビアや西のリビアともつながる部族的な慣習が強い土地柄で、ISだけでなく、いくつもの過激派組織がある。これまでもシナイ半島のエジプト軍や治安部隊、外国人観光客が宿泊するホテルを標的としたテロが続き、2015年10月にはロシアの民間機が墜落し、ISシナイ州が犯行声明を出した事件があった。
現在の軍主導のシーシ政権は2011年の「アラブの春」後の選挙で選ばれたイスラム穏健派組織「ムスリム同胞団」系の大統領を2013年にクーデターで排除し成立した。シーシ大統領は権力掌握後、シナイ半島ではISなど過激派との「テロとの戦い」を激化させたが、過激派の活動は収まらず、最悪のテロが起きた。
今回、テロの標的が軍からスーフィー主義者へと広がったことで、従来の強硬的手法による「テロとの戦い」の限界が露呈した。エジプト軍はテロの後、シナイ半島の山岳地域の「テロリスト拠点」を空爆して、車両を破壊したと発表した。しかし、空爆の標的をどのようにして確定したかも明らかでなく、新たな暴力の連鎖を生むことになりかねない。
サラフィー主義は90年代以降、インターネットや衛星放送の普及するなかで若者を中心に広がった。旧ムバラク政権時代(1981~2011年)は非政治的だったが、「アラブ春」の後、政治に参加し、選挙でムスリム同胞団に次ぐ勢力となった。「イスラム的な公正」の厳格な実施を求める考え方が若者たちに受け入れられていると見られる。
現在、サラフィーとスーフィーという全く相反する2つの宗教運動が、エジプトの民衆の間に広がっていることになる。共に民衆レベルでは平和主義だが、スーフィー主義者は軍や警察とのつながりが深く、シーシ政権の強権体制を支えている。一方のサラフィー主義の中から、「ジハード」に傾斜して、政権と対立する流れが出てくる。ムスリム同胞団は両方の要素を持ち、双方の間にあったが、現在は政治から排除されている。
この事件がすぐにシナイ半島を超えて、エジプト本土で「サラフィー対スーフィー」の抗争に発展するとは思わない。しかし、今回のイスラム過激派によるスーフィー系モスクへのテロは、エジプトでイスラム教徒同士が敵対する前例をつくり、今後、状況が悪化すればイラクのように際限のない暴力の連鎖が起こる可能性を示したことになる。
Newsweekjapan
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2017/11/post-34.php
2chの反応
>ほんと内ゲバ好きな。
>元々クーデターで政権とったのが今の大統領だしな
>カルト信者って救いようが無いな。
>何派でもいいから内輪でやっててくれ
>海外に出てこなきゃ何でもいいや
>スーフィズムはトルコが本場だと思ってたが
>スーフィーは異端扱いか?
>ダッカ襲撃の件で顕著に判明したが若者は洗脳されやすいということだ
雛の刷り込みと同レベルなことが起きやすい
イスラムは全般的にそういう傾向が強い 最初に動いたものを見て親鳥と思い込むというやつ
人間の寿命が諸々を含めると、あまりにも短いから起こる現象だともいえる…
雛の刷り込みと同レベルなことが起きやすい
イスラムは全般的にそういう傾向が強い 最初に動いたものを見て親鳥と思い込むというやつ
人間の寿命が諸々を含めると、あまりにも短いから起こる現象だともいえる…
>異教徒どうしの争いも恐ろしいけど同一宗教どうしの
争いも恐ろしいな
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