1: 昆虫図鑑 ★ 2024/09/26(木) 16:54:33.47 ID:BwhDRlx3
(略)
国際通貨基金(IMF)によれば、世界の経済成長への寄与度はインドが16%、中国が34%だ。「インドは『次の中国』になる」との期待が生まれているが、そのためには2桁近い成長を長期にわたって続ける必要があると言われている。
高学歴者ほど就業環境が厳しく
「飛ぶ鳥を落とす」勢いの感があるインド経済だが、課題も山積している。
喫緊の課題は雇用創出力の低さを改善することだ。2022年度(22年4月~23年3月)の失業率は、モディ政権発足前(2013年度)の4.9%から5.4%に上昇した。15~29歳の若年層の失業率は16%を超え、高学歴者ほど就業環境が厳しくなっている。
米シティグループの分析結果によれば、現在の成長率(年率7%)ではインドの年間の雇用創出は800~900万人にとどまるが、国内労働市場に新規参入する若年層を吸収するには年間1200万人の雇用創出が必要となるという。
インドの雇用創出力が低い主な要因は以下の2つだ。
(1)製造業のGDPに占める比率が17%と発展途上国の中で下位に属していること
(2)非農業部門の雇用に占める中小企業の割合も約4割と世界平均から見てかなり低いこと
インド準備銀行(中央銀行)は8月26日、小規模・地方業者向けの融資プラットフォーム導入を発表した。中小企業などの分野で満たされていなかった大規模な資金需要に対応する構えだが、雇用市場の改善につながるかどうかはわからない。
停電、浸水、水不足、環境汚染
インフラの脆弱性も頭の痛い問題だ。
電力インフラ全体が未整備なインドではいまだに突然の停電が起きる。安定した電力の確保には原子力発電の拡大が不可欠だが、インドの総発電量に占める原子力の比率は2%未満だ。インド政府は民間の協力を得て導入の拡大を図ろうとしている(9月14日付日本経済新聞)ものの、前途遼遠と言わざるを得ない。
豪雨災害も増加の一途だ。雨季(モンスーン)中の9月14日、文化遺産のタージマハルでは庭園の一部が大雨で浸水した。7月末には南部ケララ州の著名な観光地でも集中豪雨による土砂崩れが発生している。
一方、深刻な水不足も発生しており、経済活動に悪影響を及ぼし始めている。
有数のビジネス都市バンガロールでは、3月に水不足で企業活動全般に支障をきたす事態が発生した。米格付け企業のムーディーズ・インベストメント・サービスは6月、水不足がインドの格付けに悪影響を及ぼす可能性があるという警告を発している。
水質汚染も目を覆うばかりの状況だ。モディ氏は議員に選出された際に「ガンジス川の浄化」を公約に掲げたが、一向に改善されていない。
都市廃棄物の問題も日に日に悪化している。英リーズ大学の研究チームは9月5日、環境中に廃棄されたプラスチックごみはインドが世界最大で930万トン(2020年時点)との分析結果を発表した。
またインド当局の推計によれば、毎日排出されている17万トンのゴミのうち適正に処分されているのは3分の2に過ぎず、残りは不法投棄されている。
中国との関係と連立政権…モディ氏の求心力は
国内の懸案事項に加え、中国との関係改善も焦眉の急だ。
インドの長期的な発展にはグローバルな供給網と一体になる必要があるが、その際、中国経済との連携強化は避けて通れない。だが、2020年5月にヒマラヤ山脈の国境沿いで衝突して以来、両国の関係は緊張状態が続いている。
これが災いして、電気自動車(EV)や半導体、人工知能(AI)などの分野での資本・技術・人材の交流は滞っているものの、インド政府はここに来て緊張緩和に動き出した。
ジャイシャンカル外相は9月10日、「中国からの投資に門戸を閉ざしていない」と発言した。また産業界の働きかけを受け、政府は中国人へのビザ発給を緩和し始めている(9月11日付ロイター)。
だが、この動きが続く保証はないと言わざるを得ない。
モディ氏は6月に3期目の政権樹立に成功したが、初めて体験する連立政権の運営に戸惑っている。連立する政党の反対で重要政策の撤回を余儀なくされるなど、求心力の低下も懸念事項だ。過半数の議席を確保するために連立した地域政党ジャナタ・ダル(統一派)の地盤である東部ビハール州は、インドでも貧しい地域で低カースト民が多い。このため、統一派は保護主義的な傾向が強いと言われている。
「内憂外患」を抱えるインドが「第2の中国」になるのは、現段階では非常に難しいのではないだろうか。
藤和彦
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/09261050/?all=1
国際通貨基金(IMF)によれば、世界の経済成長への寄与度はインドが16%、中国が34%だ。「インドは『次の中国』になる」との期待が生まれているが、そのためには2桁近い成長を長期にわたって続ける必要があると言われている。
高学歴者ほど就業環境が厳しく
「飛ぶ鳥を落とす」勢いの感があるインド経済だが、課題も山積している。
喫緊の課題は雇用創出力の低さを改善することだ。2022年度(22年4月~23年3月)の失業率は、モディ政権発足前(2013年度)の4.9%から5.4%に上昇した。15~29歳の若年層の失業率は16%を超え、高学歴者ほど就業環境が厳しくなっている。
米シティグループの分析結果によれば、現在の成長率(年率7%)ではインドの年間の雇用創出は800~900万人にとどまるが、国内労働市場に新規参入する若年層を吸収するには年間1200万人の雇用創出が必要となるという。
インドの雇用創出力が低い主な要因は以下の2つだ。
(1)製造業のGDPに占める比率が17%と発展途上国の中で下位に属していること
(2)非農業部門の雇用に占める中小企業の割合も約4割と世界平均から見てかなり低いこと
インド準備銀行(中央銀行)は8月26日、小規模・地方業者向けの融資プラットフォーム導入を発表した。中小企業などの分野で満たされていなかった大規模な資金需要に対応する構えだが、雇用市場の改善につながるかどうかはわからない。
停電、浸水、水不足、環境汚染
インフラの脆弱性も頭の痛い問題だ。
電力インフラ全体が未整備なインドではいまだに突然の停電が起きる。安定した電力の確保には原子力発電の拡大が不可欠だが、インドの総発電量に占める原子力の比率は2%未満だ。インド政府は民間の協力を得て導入の拡大を図ろうとしている(9月14日付日本経済新聞)ものの、前途遼遠と言わざるを得ない。
豪雨災害も増加の一途だ。雨季(モンスーン)中の9月14日、文化遺産のタージマハルでは庭園の一部が大雨で浸水した。7月末には南部ケララ州の著名な観光地でも集中豪雨による土砂崩れが発生している。
一方、深刻な水不足も発生しており、経済活動に悪影響を及ぼし始めている。
有数のビジネス都市バンガロールでは、3月に水不足で企業活動全般に支障をきたす事態が発生した。米格付け企業のムーディーズ・インベストメント・サービスは6月、水不足がインドの格付けに悪影響を及ぼす可能性があるという警告を発している。
水質汚染も目を覆うばかりの状況だ。モディ氏は議員に選出された際に「ガンジス川の浄化」を公約に掲げたが、一向に改善されていない。
都市廃棄物の問題も日に日に悪化している。英リーズ大学の研究チームは9月5日、環境中に廃棄されたプラスチックごみはインドが世界最大で930万トン(2020年時点)との分析結果を発表した。
またインド当局の推計によれば、毎日排出されている17万トンのゴミのうち適正に処分されているのは3分の2に過ぎず、残りは不法投棄されている。
中国との関係と連立政権…モディ氏の求心力は
国内の懸案事項に加え、中国との関係改善も焦眉の急だ。
インドの長期的な発展にはグローバルな供給網と一体になる必要があるが、その際、中国経済との連携強化は避けて通れない。だが、2020年5月にヒマラヤ山脈の国境沿いで衝突して以来、両国の関係は緊張状態が続いている。
これが災いして、電気自動車(EV)や半導体、人工知能(AI)などの分野での資本・技術・人材の交流は滞っているものの、インド政府はここに来て緊張緩和に動き出した。
ジャイシャンカル外相は9月10日、「中国からの投資に門戸を閉ざしていない」と発言した。また産業界の働きかけを受け、政府は中国人へのビザ発給を緩和し始めている(9月11日付ロイター)。
だが、この動きが続く保証はないと言わざるを得ない。
モディ氏は6月に3期目の政権樹立に成功したが、初めて体験する連立政権の運営に戸惑っている。連立する政党の反対で重要政策の撤回を余儀なくされるなど、求心力の低下も懸念事項だ。過半数の議席を確保するために連立した地域政党ジャナタ・ダル(統一派)の地盤である東部ビハール州は、インドでも貧しい地域で低カースト民が多い。このため、統一派は保護主義的な傾向が強いと言われている。
「内憂外患」を抱えるインドが「第2の中国」になるのは、現段階では非常に難しいのではないだろうか。
藤和彦
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/09261050/?all=1